「台風や大雨で当日だけ大荒れになったらどうしよう」
「出演者がケガや病気になったら、イベント自体を中止せざるを得ないのでは」
「もし中止や延期になったら、そのお金はすべて持ち出しになってしまうのでは」
屋外フェスやスポーツ大会、舞台公演の準備を進めているとき、こうした不安が頭をよぎったことがある担当者も多いのではないでしょうか。
興行中止保険(イベントキャンセル保険)は、こうしたリスクに備えるための保険です。
コンサートやスポーツ大会、お祭り、花火大会などのイベントが、悪天候や出演者の傷病、交通機関の事故など予測しづらいトラブルによって中止・延期になった場合に、イベントの準備のためにすでに支出していた費用や、中止・延期に伴って追加でかかる費用をカバーすることを目的としています。
この保険の効力が及ぶのは、基本的にイベントの費用を負担している側、つまり主催者や共催・協賛企業、自治体・団体などです。
チケット代の払い戻しや会場キャンセル料、スタッフ人件費などを支払う立場にある法人・団体が、予期せぬ中止・延期による経済的ダメージを抑えるために利用する仕組みになっており、一般の個人が「自分の参加予定イベントが中止になったときのため」に直接加入する保険とは性格が異なります。
この記事では、興行中止保険(イベントキャンセル保険)がカバーする範囲や対象となる人、補償されやすいケース・されにくいケースの違いなどを、できるだけ分かりやすく解説しています。
興行中止(イベントキャンセル)保険は主催者の費用損害や逸失利益を補償する保険
興行中止(イベントキャンセル)保険は、悪天候や出演者の急病など不測かつ突発的なトラブルでイベントが中止・延期になったときに、主催者が被る費用損害や逸失利益を補償する保険です。
具体的には、屋外フェスやスポーツ大会、花火大会、舞台公演、企業イベントなどが、台風や大雨・強風、会場の火災、主要出演者の事故・病気、交通機関の大規模な遅延・運休などで開催できなくなった場合に機能します。
すでに支払っていた会場費・設営費・音響照明費・広告宣伝費、スタッフ人件費、チケット払戻し関連費用などをカバーすることを目的としており、「天気やトラブルのせいで売上がゼロになったうえ、準備費用まで丸ごと持ち出しになる」という最悪の事態を、ある程度まで抑えやすくするための仕組みです。
この保険が使われる場面として多いのは、音楽フェスやコンサート、プロスポーツの試合、マラソン大会、展示会・見本市、企業の周年イベント、地方自治体が主催するお祭りや花火大会などです。
これらの興行は、事前に多額の準備費用が発生し、かつ当日のチケット販売や物販収入に売上を大きく依存するという特徴があります。そのため、イベント主催者やプロモーター、共催・協賛企業、スポンサー、会場運営会社など、イベントに経済的な利害関係を持つ法人・団体が加入者(被保険者)となり、自社の経済的損失を補償する目的で興行中止(イベントキャンセル)保険を利用するケースが一般的です。
なお、「イベントが中止になったとき、自分が買ったチケット代を補償してくれる保険」と誤解されやすい点には注意が必要です。
主催者側の損失を補う興行中止(イベントキャンセル)保険と、個人がライブやスポーツ観戦のチケット代を守るために加入するチケットキャンセル保険・旅行キャンセル保険は、仕組みも補償対象も別の保険です。一般の参加者が自分のチケット代を守りたい場合は、クレジットカード会社や通販サイトなどが用意している個人向けのチケットキャンセル系保険を検討する必要があります。
興行中止保険にも費用補償型や天候限定型など複数のタイプがある
同じ興行中止(イベントキャンセル)保険でも、補償の設計やリスクの捉え方によっていくつかのパターンに分けられます。
まず大きな軸になるのが、補償の対象を「すでに支出した費用」と「得られるはずだった利益」のどちらまで広げるかという点です。
たとえば損保ジャパンや三井住友海上などの興行中止保険では、偶然な事故でイベントが中止などの影響を受けた場合に、準備のために支出する費用か、あるいは喪失する利益までを保険金支払いの対象とする仕組みが採用されています。
さらに、屋外イベントに特化して悪天候のみを対象にする「ミニ興行中止保険」のような簡易型もあります。コンサートやスポーツ大会、花火大会などで、開催日が1日・予備日なしといったケースを想定し、悪天候による中止だけをカバーするプランが用意されており、会場使用料や設営費、チケット払戻し手数料などに限定して補償しています。
代表的な種類を順番に見ていきましょう。
イベント開催のためにすでに支出した費用を中心に補償するタイプです。会場費や設営費、出演料、広告宣伝費、スタッフの交通費や宿泊費、チケット払戻し関連費用など、事前に出ていったお金をどこまでカバーするかを契約時に定めます。
小中規模イベントや、「利益は大きくなくても、準備費用の持ち出しが増えるのは避けたい」という主催者に適しています。
費用だけでなく、本来得られるはずだった利益まで補償の対象に含めるタイプです。チケット売上や物販収入、スポンサー収入などを基に喪失利益を算出し、支払限度額を設定します。
大規模フェスやプロスポーツの試合、展示会など、売上規模が大きくキャンセルによる利益喪失が致命的になりやすいイベントに向いています。
損害額に縮小支払割合を掛けて支払い上限を決める方式が採用されることもあり、設計はやや専門的です。
費用損失と喪失利益の両方をセットで補償するタイプで、実務では標準的な設計の一つです。
イベントが中止や縮小開催になった場合に、準備費用、追加で発生する臨時費用、売上の喪失分をトータルでカバーできるよう、保険金の支払限度額や自己負担額、縮小支払割合などを事前に細かく決めます。
全国ツアーや自治体主催の大型イベントなど、関係者や費用項目が多い興行に向いています。
悪天候による中止だけを対象にした簡易型です。開催日が1日で予備日が無い屋外イベントを想定し、一定以上の降雨量や風速が観測された場合に中止となったとき、事前に支出していた費用や中止に伴う臨時費用を補償します。
補償範囲を絞る代わりに保険料を抑えやすく、町内会のお祭りや地域の花火大会など、予算が限られたイベントにも導入しやすいタイプです。
これらの違いを比較すると、どのタイプが自分たちのイベントに合うかイメージしやすくなります。
| タイプ名 | 補償のイメージ | 主な補償対象 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 費用補償型 | 持ち出しになった準備費用を守る | 会場費、設営費、出演料、広告費、スタッフ費用、払戻し手数料など | 小中規模イベント、収支はトントンでも赤字だけは避けたい主催者 |
| 利益補償型 | 得られるはずだった利益までカバー | チケット売上、物販収入、スポンサー料などの喪失利益 | 大規模フェスやプロスポーツ、展示会など、売上規模が大きい興行 |
| 費用と利益の包括型 | 費用と利益をセットで補償 | 準備費用+臨時費用+喪失利益を総合的にカバー | 出演者や協賛が多い大型イベント、ツアー、自治体主催イベント |
| 天候限定型ミニ興行中止保険 | 悪天候リスクに絞って簡易に備える | 悪天候で中止になった場合の準備費用や臨時費用 | 屋外の単日イベント、地域の祭りや花火大会など予算が限られる企画 |
さらに興行中止保険は、単発イベントごとに契約する方式と、年間を通じて複数のイベントをまとめてカバーする「年間包括契約」という形に分けられることもあります。
年間を通じて頻繁にイベントを開催する興行会社やプロモーターであれば包括型の方が保険料の予算管理がしやすく、年に1回だけの花火大会や記念コンサートであれば、そのイベント専用の単発契約の方が実態に合うケースが多い設計です。
どのパターンが適切かは、イベントの規模や開催頻度、チケット売上とスポンサー収入のバランスなどによって変わります。
興行中止保険・イベントキャンセル保険を取り扱う主な商品
興行中止保険やイベントキャンセル保険を扱っている主な商品には、次のようなものがあります。ここでは法人・団体向けを中心に、代表的な商品やサービスをピックアップしました。
| 保険会社・サービス提供者 | 商品・サービス名 | 主な対象イベント | 補償のポイント | 申込窓口・備考 |
|---|---|---|---|---|
| 三井住友海上火災保険 | 興行中止保険 | コンサート、演劇、スポーツ大会、お祭り、花火大会、博覧会など非日常性のあるイベント全般 | 悪天候や出演者の傷病、交通機関の事故など不測かつ突発的な事由で中止・延期になった場合の準備費用や臨時費用、喪失利益をオーダーメイドで補償する設計 | 三井住友海上の法人向け取扱代理店や営業店を通じて見積もりと設計を行う形式 |
| 東京海上日動火災保険 | 興行中止保険 | コンサート、スポーツ大会、企業イベントなど幅広いイベント | イベントが悪天候や交通機関の事故などで中止になった場合に、イベント開催のために支出した費用と、中止や延期で追加発生した費用を補償する商品。ニーズに応じてプラン設計が可能 | 東京海上日動の法人向け窓口や代理店経由で契約。補償内容や条件は個別設計 |
| 損保ジャパン | 興行中止保険(イベント中止保険) | 企業や団体が主催する各種興行やイベント | 売上や収益の減少リスクに備える企業向け商品の一つとして位置付けられており、興行中止により発生する費用損害や収益減少を補償する枠組みが用意されている | 損保ジャパンの企業向け商品ラインアップの一部として取り扱い。詳細は代理店・営業店で個別相談 |
| あいおいニッセイ同和損害保険 | ストリーミングイベント中止保険 | 配信のみ、または有観客と配信を組み合わせたライブ配信イベント | 従来の興行中止保険が想定していなかった配信トラブルによる中止リスクも補償対象に含めた商品。悪天候や出演者キャンセルに加え、配信機器の不具合などによる配信中止の損害をカバーできるのが特徴 | 同社および提携プラットフォームを通じて販売。ウィズコロナ期以降のオンラインイベント需要に対応した新タイプ |
| グッド保険サービス(保険代理店) | ミニ興行中止保険 開催日1DAY専用 | 開催日が1日で予備日のない屋外イベント(祭り、花火大会、スポーツ大会など) | 中止理由を悪天候に限定することで保険料を抑えた簡易型。会場使用料、会場設営費、チケット払戻し手数料など、事前支出費用と中止に伴う臨時費用を対象に、町内会など小規模イベントでも加入しやすい設計 | 保険代理店が取り扱う法人・団体向け商品。申し込みは開催日の3か月前から受付など、運用ルールが明確 |
興行中止保険やイベントキャンセル保険は、イベント内容や規模、開催地点、時期などによって引受可否や補償範囲、保険料が大きく変わります。
ここで紹介した商品内容はあくまで概要レベルであり、実際の契約時には必ず各社の最新パンフレットや約款、見積書で詳細を確認し、代理店や保険会社担当者から具体的な説明を受けることが重要です。
興行中止保険やイベントキャンセル保険を選ぶ際は、まず自分たちのイベントが単発か年間複数なのか、屋外か屋内か、配信の有無はどうかといった条件を整理することが出発点になります。
そのうえで、費用だけ守れればよいのか、売上やスポンサー収入の喪失までカバーしたいのかを明確にすると、三井住友海上や東京海上日動のようなオーダーメイド型か、ミニ興行中止保険のような簡易型かといった選択肢が絞り込みやすくなります。
配信イベントが中心なら、あいおいニッセイ同和損保のストリーミングイベント中止保険のように、オンライン特有のリスクも補償対象に含めた商品を検討しておくと、実態に合った備えになりやすいでしょう。
興行中止保険・イベントキャンセル保険のメリットとデメリット
興行中止保険やイベントキャンセル保険には、イベント主催者にとって心強い点が多い反面、誤解されやすい点や注意すべき制約もあります。
まずメリットとして大きいのは、予期せぬ中止や延期が発生しても、準備のために支出した費用や喪失した売上の一部をカバーできる点です。
会場費や設営費、広告宣伝費、チケット払戻し関連費用などが大きい興行では、興行中止保険があることで致命的な赤字を避けやすくなります。
また、天候や出演者の病気など、主催者の努力だけではどうにもならないリスクに対して、事前に「経済的な着地点」を用意しておけるため、中止の判断を安全面・コンプライアンス面から行いやすくなる効果もあります。
さらに、イベントキャンセル保険に加入していること自体が、スポンサー企業や会場側、金融機関に対して「リスクマネジメントをきちんとしている主催者」という印象を与えやすい点も見逃せません。
その反面、興行中止保険にはデメリットや限界もあります。代表的なのが保険料負担です。イベントの規模やリスク水準によって保険料は変動し、予算が限られている小規模イベントにとっては負担が重く感じられることがあります。
また、「どんな理由で中止しても必ず全額補償される保険」ではなく、約款で決められた原因と条件を満たした場合だけ支払われる仕組みです。
販売不振による自主中止や、主催者側の判断ミスなどは対象外であることが多く、期待していたほど補償されない可能性もあります。
加えて、補償範囲や支払限度額、自己負担額、縮小支払割合などの設計が複雑になりやすく、内容を十分理解しないまま契約すると「このケースは対象外だった」という行き違いが起こりがちです。
引受けの審査もあるため、開催直前に慌てて加入しようとしても断られたり、保険料が高くなったりするケースも考えられます。
- 台風や出演者の急病など、不測かつ突発的な事由でイベントが中止・延期になった際の費用損害や喪失利益の一部を補償してもらえる
- 会場費・設営費・広告費・チケット払戻し費用など、事前に支出した大きなコストの持ち出しリスクを抑えやすい
- 経済的な不安を軽減できるため、安全面やコンプライアンスを優先した中止判断を行いやすくなる
- スポンサーや会場、金融機関に対して、リスク管理を意識している主催者であることを示しやすい
- 年間包括型の興行中止保険を活用すれば、年間を通じた複数イベントのリスクをまとめて管理できる
- イベントの規模や内容によっては保険料が高額になり、予算が限られた小規模イベントでは負担感が大きくなりやすい
- 中止・延期の理由が約款で定められた範囲に限定されるため、販売不振や主催者の都合による中止などは補償対象外になることが多い
- 支払限度額や自己負担額、縮小支払割合などの条件によって、実際に受け取れる保険金が想定より少なくなる可能性がある
- 補償条件や中止認定の基準が複雑で、内容を十分理解していないと「このケースも出ると思っていたのに」というギャップが生まれやすい
- 引受審査の結果、高リスクと判断されたイベントは加入を断られたり、条件が厳しくなったりすることがあり、直前の駆け込み加入には向かない
興行中止保険を利用すべき主催者と検討を控えてよいケース
大きなイベントの準備を進めていると、「もし当日に台風が直撃したら」「出演者に急なトラブルが起きたら」と不安になることがあります。特に会場費や設営費、広告宣伝費などをすでに支払っている場合、「ここで中止になったら赤字がとんでもない額になる」と感じている主催者も多いはずです。
興行中止保険は、こうしたプレッシャーの中でイベント運営をしている人ほど検討する価値が高い保険ですが、すべてのイベントに必ずしも必要とは限りません。
自分たちのイベントの規模や収支構造、リスク許容度に照らして、「保険で守る部分」と「自前で受け止める部分」を整理していくことが大切です。
全国ツアーや大型フェス、プロスポーツの試合など、1回の中止・延期で数百万円〜数千万円規模の損失が出る可能性がある場合、興行中止保険は「会社を守る最後のクッション」になり得ます。
チケット売上やスポンサー収入の割合が大きく、1回の中止が事業全体の資金繰りや次回以降の開催可否に直結するような興行ほど、保険の必要性は高くなります。
自治体主催の花火大会や市民祭りなど、毎年の恒例行事で地域からの期待も大きいイベントでは、「赤字を出してでも最低限の体裁は保ちたい」と考えるケースが少なくありません。
興行中止保険を組み合わせておくと、万一の中止・縮小開催でも、事前に想定した範囲内の持ち出しに抑えやすくなり、翌年以降の継続開催もしやすくなります。
会場費・設営費・音響照明費・広告宣伝費などを前倒しで支払っており、開催直前で中止になると運営会社の資金繰りが厳しくなる場合、興行中止保険は検討する価値が高い選択肢です。
特に、複数公演やツアーを同一法人でまとめて引き受けている場合は、単発の中止でもキャッシュフローに与える影響が大きくなるため、費用補償型や費用+利益の包括型を組み合わせておくと安心です。
スポンサー企業や出展社から多額の協賛金・出展料を受け取っている展示会・見本市、カンファレンスなどでは、中止時の対応を契約上どう取り決めるかが重要なポイントになります。
興行中止保険を活用し、「どの条件で中止と判断した場合に、どの程度の返金・代替対応ができるか」をあらかじめ設計しておくと、スポンサーとの関係維持やレピュテーション管理にもつながります。
オンライン配信を組み合わせたハイブリッドイベントで、会場側・配信機材側の両方に高額な固定費がかかっている場合、どちらか一方のトラブルでも中止・大幅な縮小につながるリスクがあります。
配信トラブルや会場トラブルへの備えを求められている主催者は、従来型の興行中止保険に加え、ストリーミング専用のイベント中止保険なども含めて検討しておくと、現代的なリスクに対応しやすくなります。
商店街の小さなイベントや町内会のお祭りなど、総予算自体が比較的少額で、多少の赤字であれば許容できる範囲に収まる場合は、保険料とのバランスが合わないことがあります。
このようなケースでは、保険よりも「規模を絞る」「予備日や代替案を確保する」など、企画側の工夫でリスクを抑える方が現実的なことも多いです。
チケット販売をほとんど行っておらず、参加費無料の代わりに支出も最低限に抑えているボランティアイベントでは、悪天候時は中止にして翌年以降で調整しやすいケースもあります。
この場合は、興行中止保険でカバーするよりも、「キャンセルポリシーをゆるやかにする」「スポンサーから現物提供を受ける」など、支出構造そのものを軽くしておく方が有効なこともあります。
会場費や設営費を「当日精算」にしてもらっており、前払いの固定費が少ない場合や、キャンセルポリシーを柔軟に交渉できている場合は、そもそも中止時の持ち出しが限定的です。
こうした環境が整っている主催者にとっては、興行中止保険よりも、契約条件の維持・改善に力を入れる方が合理的なこともあります。
イベントの性質上、悪天候でも屋内会場に切り替える・オンライン配信に切り替えるなどの代替手段を取りやすく、「完全中止」になる可能性が低い企画では、興行中止保険の優先度は下がります。
このような場合は、代替手段の準備や運営体制の整備に予算を回し、「中止」ではなく「形を変えて実施できる状態」を作る方が、トータルのリスクを抑えやすくなります。
イベント運営がまだ立ち上げ段階で、そもそも保険料に充てる予算がほとんどない場合は、その分を安全対策や予備日確保に回した方が合理的なケースもあります。
この場合は、会場契約やキャンセル条件の見直し、雨天時の予備日設定、スケジュールや告知方法の工夫など、保険以外のリスク対策を優先的に検討する方が現実的です。
興行中止保険に加入する際の注意点とよくある失敗
興行中止保険やイベントキャンセル保険を検討するときに、つい見落とされがちなのが「どこまで補償されて、どこからが自己負担なのか」という線引きです。
パンフレットのイメージだけで判断してしまうと、いざ中止になった瞬間に、想定していた金額よりも保険金が少なかったり、そもそも補償対象外になっていたりするケースがあります。
典型的な失敗として多いのが、中止理由に関する誤解です。
販売不振や予約が伸びなかったための自主中止、出演者のスケジュール調整ミス、主催者側の事情によるキャンセルなどは、多くの興行中止保険で免責事由として扱われます。
また、感染症やテロ、戦争、治安悪化に関するリスクは、基本補償では対象外になっていることもあり、別途特約でカバーする必要がある商品も少なくありません。約款を確認しないまま「何かあったら全部出るはず」と思い込むのは危険です。
主催者としては「かなり雨が強かった」「風が強くて危ない」と感じていても、保険上は気象庁の観測データや、事前に取り決めた降雨量・風速などの客観的な基準を満たさないと支払い対象にならないことがあります。
中止判断のプロセスや、その根拠となるデータ、自治体からの自粛要請などを記録しておかないと、あとから正当性を説明しづらくなる点も要注意です。
保険料を抑えようとして保険金額を低くし過ぎると、実際の損害額が上回ったときに大きな自己負担が残ります。
逆に、過大な金額を設定すると、無駄に保険料だけが膨らみ、費用対効果が悪くなってしまいます。
会場費、設営費、音響照明費、広告宣伝費、出演料、スタッフ人件費、チケット払戻し関連費用など、対象となるコストを洗い出し、適切な水準を見積もる作業が欠かせません。
さらに、自己負担額や縮小支払割合、予備日の扱いなど、細かい条件も見落とされがちです。
例えば、予備日を設定しているイベントでは、当初予定日が悪天候で中止になっても、予備日に無事開催できれば支払い対象外となる設計が一般的です。
また、一部公演のみ中止になった場合は、全公演中止の場合より支払額が少なくなるルールが設けられていることもあります。
こうした条件を踏まえずに収支計画を組むと、「保険に入っていたのに赤字が埋まらない」という結果になりかねません。
開催直前にリスクが高まってから駆け込みで加入しようとしても、引受けを断られたり、特別条件が付いたりすることがあります。
大型イベントやシーズン需要が集中する時期は、早めに代理店や保険会社と相談し、補償内容と保険料のバランスをすり合わせておく方が現実的です。
最後に、契約内容を社内で共有していないこともトラブルのもとになります。
実務を担う現場スタッフや経理担当者が、興行中止保険の適用条件や必要書類を把握していないと、中止決定後の対応が後手に回り、請求に必要な証拠資料を残せないことがあります。
リスク管理の一環として、契約時点で社内マニュアルやチェックリストを整備しておくと安心です。
- 販売不振や主催者都合による自主中止は、多くの興行中止保険で補償対象外になりやすい
- 感染症やテロなどのリスクは、基本補償では対象外で特約が必要な商品もあるため、約款で要確認
- 悪天候による中止は、気象データなどの客観的な基準を満たさないと保険金が支払われない場合がある
- 保険金額を低く設定し過ぎると実際の損害額との差額を自社で負担することになり、過大設定は保険料の無駄につながる
- 自己負担額や縮小支払割合、予備日の扱い、一部中止時の計算方法など、細かい条件によって支払額は大きく変わる
- 開催直前の駆け込み加入は、引受けを断られたり条件が厳しくなったりする可能性がある
- 契約内容や請求条件を社内で共有しておかないと、中止時に必要な証拠資料や手続きが整わず、保険金請求で不利になりかねない

